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復職など

小学生ですが、交通事故で、頭に障害を受けました。身体的には、すっかり元気になりましたので、1日も早く学校に通わせたいと思います。どのようなことに注意したらよいでしょうか?

復学は、お子さんの回復や成長に望ましいことです。復学後の学校生活がプラスとなるよう、支えていけることが大切です。

しかし、残念ながら、マイナスの経験をもたらしてしまうことも見受けられます。『受傷前の環境にできるだけ早く戻り、どんどん刺激を与えることが良い』という、考え方や、『子供の柔軟な適応力を頼りにしただけの対応』にならないように注意しなければなりません。

子供は友達との遊びを通して社会的なルールや対人関係を学び、成長していきます。しかし、この発達過程に高次脳機能障害を持つようになった場合にはこれらの経験をうまく積み重ねることができないことがあります。

教科学習の理解力も落ちる、長い入院生活で、空白期間があった、あわせて、行動も、元のように行かない、などから、時にいじめにあったり、過度に保護されたりします。そのために、登校拒否など2次的な不適応を起こし、成人後の社会参加にも影響することになります。

ご家族がお子さんの後遺障害について理解し、特徴を把握して、学校や同級生に前もって話をする機会を作ってもらい、家庭と学校が緊密に連携して本人を温かくサポートしていくことが大切です。

できれば、病院のスタッフから、学校関係者に、障害と対応について説明してもらうことが大切です。

脳外傷友の会のメンバーが視察した、アメリカのある州では、こどもが学校に戻るためのリーフレットもあり、病院から、スタッフが出向いて、同級生たちに、どのようなサポートが必要なのか、解説し、一緒に考えるプログラムがあるといっていました。日本でも、早くこのようなシステムが作れると良いのですが。

現在の状況では元のクラスに戻ることは難しそうなのですが?養護学校など、又は、特別支援学級に入ったほうがいいでしょうか?

基本的には、受傷前の本人が良く知っているクラスに戻ることが望ましいでしょう。しかし、本人の後遺症が重く、じっとしていられない、興奮しやすい、などの場合は、行動が落ち着くまでは、在宅訪問教育 養護学校 保健室登校、特別支援教育など、さまざまな形態が考えられます。

最寄の市町村の教育委員会には、担当の指導主事がいますから、ご相談になってください。その上で、学校関係者と、十分な打ち合わせを行って、最善の方法からスタートすることが望ましいと思います。

学習の遅れを取り戻すために、家庭教師をつけるか、塾に通わせたいのですが?

確かに長く学校を休んでいたのですから、学習の遅れを取り戻さねばというお考えはわかります。

しかし、今お子さんは、すべてが、新しい出発の時なのです。肉体的にも、精神的にも、大変な負荷を抱えてがんばっているのだと思います。大変疲れやすくもなっています。先ず、毎日の生活に慣れることを重点にして、少しずつ前に進んでいきましょう。

あせりは親子ともども禁物です。「のん気、元気、根気、やる気」の4気主義で行きましょう。

学校に普通に通える体力・気力が戻ってきたら、家庭教師などの協力者を求めるのも良いかもしれません。

大学生です。復学して元の学部の学習についていけるか不安です。

多くの大学には学生相談室があり、カウンセラーなどが相談にのってくれると思います。自宅通学の場合は食事などは家族が作ってくれるでしょうが、単身で生活している場合には、生活の一切を自分が計画実行しなければなりません、身近な相談相手や支援者もいないのであれば、何から何まで行うのは、受傷直後は、相当負荷がかかります。

生活、行動の面で、慣れてきてから、復学を考えるべきでしょう。

学生相談室などで、相談し、ボランティアによるサポート体制、身体介助が必要か、ノートテイクが必要か、又担当教授とも、話し合って、試験などは、決められた時間内に答案用紙に記入することが困難な場合は、レポート提出とか、実験や実技ができなくなっている場合もありますから、綿密な相談が大切です。

又、聴覚や、視覚にも、思いがけない後遺症状が残っている場合もありますので、座席などの配慮も要するかもしれません。

高校生などで、受験を控えていたりすると、どうしても、学習面での遅れを取り戻そうと、負荷をかけすぎることがありますが、無理は禁物です。

脳にも大きな負担をかけることになりますから、先ずは日常生活を規則正しくすることから始めて、通学に耐えうる体力の維持、集中力、持続力を少しずづ付けていきましょう。

参考資料
「大学における支援体制の構築のために  発達障害のある学生支援ガイドブック―確かな学びと充実した生活を目指して―」
編著:独立行政法人国立特殊教育総合研究所
発行:ジアース教育新社 2005年5月 ¥1,400
子供の脳損傷の当事者、家族の会はありませんか?

「こどもの脳損傷・アトムの会」があります。

神奈川リハビリテーション病院小児科栗原まな先生と、関係家族が作った会ですが、今では全国に会員がいます。

他にインフルエンザ脳症の会として『小さないのち』の会があります。

こどもの場合の相談機関はどこに行ったらいいでしょうか?

医療に関する相談か、教育に関する相談か?によってもことなります。

先ずは、市町村の保健福祉事務所、教育委員会、子供サポートセンター、障害福祉課等に電話をしてみてください。相談内容に応じた相談機関の紹介を受けることができると思います。

県レベルの相談機関もあります。

神奈川県の場合は、県立小児療育センター 県立教育センターなどで、相談に応じています。

又、民間障害児施設などでも、地域療育等相談支援事業として、相談窓口を開設しているところがあります。

障害を持つ大学生の当事者組織はありますか?

大学車椅子バスケットボール連盟、など、スポーツ系の当事者団体はかなりあります。又、学生無年金訴訟問題連盟など、年金問題などを争点に団結して行動を起こしている会、などがあります。

障害を持つ学生の就職に際しても、アドバイス、就職情報を提供している団体や大学もあります。ただし、視覚障害者や聾などの障害の組織は多いのですが、脳損傷後遺症者に十分な活動をしている学生組織は少ないと思われます。今後そのような組織の設立も期待したいものです。

しかし、ハートビル法によって、障害学生を受け入れる、建物などのバリアフリーは進んできていますので、アクセス面からの受け入れ状況は良くなってきています。復学をあきらめずに、チャレンジすることも大事なことです。

アメリカのバークレーのように、障害学生が障害者運動をリードして、社会や、制度を変えていくことも大事なことでしょう。

東大の助教授としてご活躍の、福島智さんは、視覚と聴覚に障害を持つ方ですが、厚生労働省の審議会で障害者部会委員として、障害者施策に関わる大事な発言を続けておられます。

視覚障害のお医者さんも、登場していますね。障害を持った方々が、さまざまな分野で活躍していくために、大学での当事者組織ができるべきと思います。

受傷後、まだ会社に籍はあります。退院後は仕事もたまっていると思うと休んでいることが気になって仕方がありません。早く復帰したいのですが?

お気持ちは、よくわかります。しかし、あなたの受けた障害がどのようなものであるか、それによって、できる仕事とできなくなった仕事があると思います。上司、人事担当者、ご家族、などとご一緒に担当医とご相談されたほうが良いと思います。そのうえで、元の仕事が支障なくできるか、場合によっては配置転換していただいて、より適切な仕事につくなど、あせらずに試みていくことが大事でしょう。

責任の重い仕事で、会社に損失を与えたりする事態は避けなければなりません。負荷がかかりすぎて、ストレスが増すことは予後を悪化させます。

夫は、早期に職場復帰したいと考えているようですが、妻の私から見ると、日中でも居眠りしている今の状態では無理なように思いますが?

本人や主治医の判断だけでは、本当に復職ができる状態になっているかどうか正確でない場合があります。

ご家族の観察は、とても大事です。以下のようなことがあれば、専門的な病院で、神経心理学的な評価を受けるか、障害者職業センターなどで、職業能力検査などを受けて、復職に向けての専門的アドバイスを受けることが大切だと思います。

場合によってはジョブコーチ支援も必要でしょう。

  • 疲れやすく、居眠りすることが多い。
  • 何かを始めても、続けて行うことができない。
  • 声をかけないと、自分から行動しない。
  • これまで、普通にできていた家庭内のことに戸惑っている。時間がかかる。
  • 頼んだことを忘れている。抜けていることが多い。
  • 些細なことで気が沈み、怒り出すことが多い。
  • 自分勝手な解釈が多い。
退院後、自宅にいるとどうしても、生活が不規則になり勝ちだと思います。規則正しい生活をするにはどうしたら、よいでしょうか?

自分を律して生活していくことは、難しくなっている場合が多いと思います。ご家族が口やかましく叱咤激励することは、最も避けなければなりません。入所施設などに入って、規則的な生活をすることもひとつの方法です。

又、自宅から通える小規模作業所などに、通所することによって、通勤体験、体力の向上、仕事への持続力、コミュニケーション能力をつけつ事も大事です。又、記憶力や遂行機能障害がある場合は、メモをとる習慣をつけるなど、障害によって不得手になっていることへの自覚を持つためのトレーニングが大切です。

1日の行動予定表を壁に張ったりして、できるだけ、自分で行動管理できるし易い生活の仕方を工夫しましょう。

復職はしたのですが、どうも以前のように、うまく仕事ができなくなっているようです。家族として心配なのですが?

復職はゴールではありません。日常生活では感じられなかった、高次脳機能障害の影響が職場という、複雑な環境下で生じている場合が多くあります。

臨機応変の対応、コミュニュケーション能力、など、本人がミスがミスに気がつかない場合、また気がついても、自分で修正できずに、葛藤している場合も多くあります。ご家族を交え、職場の上司などと早期に、相談をされることが大事だと思います。

以前の仕事に戻ることはできないことが、わかりましたので、新規に就労したいと思っています。障害者手帳は身体障害5級をもらいました。ハローワークにいって仕事を探しましたが、自分のやりたい仕事が見つかりません。

「やりたい仕事」と、「できる仕事」には、かなりの隔たりがあると思います。受傷以前の能力など考えると、なかなか自分自身が納得できる仕事を探すことは難しいかもしれませんが、『賃金を得て、生活を維持すること』を優先するのか『自分の生き方として納得できる仕事をする』のか、自分に対する価値観や、仕事につくことで、安定した職業生活を送ることを判断材料に決めていくことが大切でしょう。

自分のやりたい仕事に就くための、技術や資格が必要なら、改めて、それにチャレンジするための学校に通うなども必要になってくるでしょう。職業能力開発校、職業訓練校などに通うことも大切だと思います。

ジョブコーチ支援を受けて、就労にチャレンジしたいと思います。どこに申し込んだらいいのですか?

ハローワークから就労斡旋を受ける場合に、相談してみてください。

障害者職業センター(各、都道府県にあります)のカウンセラーの助言を受けることもあなたの適正がどのような仕事に向いているか、判断材料を提供してくれますので、大切だと思います。その上で、仕事場での手順などを解りやすく教えてもらえるジョブコーチをつけてもらうことは、無理な自己判断を避け、合理的な解りやすい、手順などを覚えるために必要なことだと思います。ぜひ、活用したい制度です。

障害者の集団面接に行ってみたいのですが?

ぜひ、参加してみましょう。障害について、なかなか理解してもらえないかもしれませんが、自分の得意なこと、不得意なことなど、きちんと説明できると、相手もミスマッチを起こさずに、就労の機会を得られるかも知れません。

あらゆる機会を捉えて、就労したいという意欲を持ち続けること。それに向かって努力していくことは、何よりも大切なことでしょう。

インターネット情報、新聞情報、就職情報誌などにより情報を得ることも大事です。しかし、いたずらに、給料などの雇用条件のよさに着目するのではなく、障害を負った自分が出る仕事かどうか、通勤時間、勤務時間など、無理の無い勤務可能な条件であるかどうかを主眼に職場を選ぶように心がけましょう。

障害者雇用の民間コンサルタント会社も最近では多くなりました。

自治体が運営している就労援助機関もあります。自己判断による就職活動ではなく、援助者を仲介しての客観性のある就職活動も大事だと思います。

特例子会社とはどのような会社ですか?

わが国では、障害者の雇用を促進するための法律により、障害者雇用率というのが定められています。従業員300人以上の企業では、1.8%の障害者を雇用しなければなりません。従業員1,000人の企業では18人の障害者を雇用しなければならないということですね。

ところがこの雇用率は、なかなか守られず、未達成企業が続出しています。そのため、一部の企業では、別の子会社を作って、障害をもつ社員がしやすい仕事をその子社に受注して、障害者雇用をしています。その場合、この子会社を本社の雇用率に換算してよいと特例で認められています。

障害者の就労定着率もよく、職場環境などへの配慮もあって、障害者が働きやすいため、大企業の中では近年、特例子会社を作って、障害者を雇用するところが急速に増えてきました。

なお、雇用率未達成企業名は毎年、厚生労働省により、公開されています。改善命令に従わない企業名は、新聞紙上にも掲載されるようになりました。